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健康寿命と貯筋

トレーニング

健康寿命とは、健康上の問題がなく日常生活を送れる期間のことです。
平均寿命だけでは、高齢者の生活・健康状態や生活の質(QOL)を把握しにくいため、用いられるようになりました。
平均寿命との差は男性で7~8年、女性で12~14年とされており、この差が医療・介護を必要とされる状態と言い換えることができます。
したがってシニア世代にとって健康寿命を延ばすことが、健康的な老後を送るために不可欠なのです。
健康寿命を延ばすために政府は2000年に「健康日本21」と呼ばれる運動を推進し、健康づくりを提案しています。
2019年に策定された「健康寿命延伸プラン」では、健康寿命の目標と目標達成のための施策についてまとめました。
2040年までに健康寿命を2016年に比べて3年伸ばし、75歳以上を目標としています。

健康寿命を延ばすには

健康寿命を延ばすためには「生活習慣の改善」「運動」「食事」の3つが非常に重要です。
要介護や寝たきりにならないためには、運動機能や身体機能など、自身の状態を知り、自立度が低下しないように心掛け、予防することが重要になってきます。
この記事では運動について説明してきます。

健康寿命を延ばすために運動習慣を身につけよう

健康習慣を伸ばすために運動が重要な理由は、死亡原因の上位を占める生活習慣病を予防するためです。
また、健康寿命を縮めてしまう原因となる転倒・骨折を予防するためにも、運動は不可欠といえます。

コツコツ貯筋(ちょきん)して健やかな老後を

老後の生活に向けて筋肉を育て、貯めていくという考え方を貯筋といいます。人は加齢とともに身体の機能が徐々に低下していきますが、筋肉もその一つです。
使わずにいると機能低下がどんどん進んでいきます。特に脚の筋肉は早く落ちやすく、立ち上がる、歩く、階段を昇るといった行動がしにくくなってきます。
そうなると転んで骨折し、寝たきりとなってしまうケースも少なくありません。
そこで、日ごろから筋肉を鍛えておこうというのが貯筋なのです。

筋トレをするメリット

シニア世代が筋トレをするメリットは、筋力や筋肉量の維持・増加による身体機能の改善や、骨密度の向上、認知機能の改善などが挙げられます。
また、筋トレは生活習慣病の予防にも効果的で、健康的な老後を送るために必要な運動の1つです。

身体機能の改善について

加齢はあらゆる衰えをもたらします。加齢による虚弱がもたらすフレイル、筋肉による衰えであるサルコペニアのほか、日常生活に支障をもたらすロコモティブシンドロームなどがあります。
しかし、これらは筋トレにより、予防・改善が期待できるのです。

筋肉量維持の重要性について

筋トレにより、筋肉が太くなり、筋肉量が増えることで身体を動かすためのエネルギー量の増加、基礎代謝の向上、血流改善が期待できます。
また、関節への負担が減り、腰痛やひざ痛の軽減にもつながります。
筋力増強とともに転倒予防、生活の質向上を図ることも可能です。

認知機能の改善について

強めの筋トレを続けていると、感覚神経のつながりがよくなり、疲労や痛みを感じるようになりますが、それにあわせて認知機能も向上するといわれています。

生活習慣病の予防について

筋トレは糖代謝異常の予防や脂質代謝の改善が見込まれることから、生活習慣病を予防する効果があります。

筋トレのやり方

運動

筋トレを行う際の基本的なやり方は以下の通りです。

ウォームアップを行う

筋トレを始める前に、軽い有酸素運動やストレッチなどを行い、身体を温め、関節の可動域を広げることで怪我を防ぎます。

目的に合わせたトレーニングメニューを選ぶ

トレーニング目的に応じて、重量や回数、セット数、休憩時間などを決め、トレーニングメニューを選択します。

姿勢に注意する

筋トレは正しい姿勢を保つことが重要です。背筋を伸ばし、肩甲骨を引き、膝を軽く曲げた姿勢をとります。

重量に注意する

道具を使って筋トレをする場合、重量は自分の力量に合わせて選びます。初めてトレーニングを始める人は、軽めの重量から始め、徐々に重量を増やしていきます。

動作をスムーズに行う

筋トレを行う際には、無理な力を入れずに、スムーズな動作を心がけます。急激な動作は怪我の原因になるため、ゆっくりと動作を行い、筋肉をしっかりと刺激します。

クールダウンを行う

トレーニングを終えたら、クールダウンを行い、身体を休めます。有酸素運動を行ったり、ストレッチを行ったりすることで、筋肉の緊張を解き、怪我を防ぎます。

以上が、筋トレの基本的なやり方になります。筋トレを行う際には、自分の体力や目的に合わせたトレーニングを行い、正しい姿勢や呼吸法に気を付けることが大切です。

筋トレの注意点

筋トレを行う上で注意したいポイントを紹介します。

息は止めない

筋トレは無酸素運動といわれていますが、息を止めて行う運動ではありません。筋肉を使うためのエネルギーを、酸素を使わず作り出すために無酸素運動といわれています。
息を止めて力を入れることで、血圧が急激に上がってしまい危険です。筋トレをしている間はしっかり呼吸しましょう。

無理せず体調に合わせる

筋トレでは目標回数を設定して行いますが、回数はあくまで目安であり、こだわる必要はありません。
その時の体調に合わせて調整しましょう。長く続けるには、無理しないことが大切です。

水分補給は忘れずに

筋トレ中、筋トレ後は水分補給を忘れずに。冷たい水よりも常温やぬるま湯のほうが身体への負担をかけないのでおすすめです。

空腹時は避ける

筋トレは基本的に自分のやりやすいタイミングでかまいません。ただ、空腹時は筋肉がトレーニングの燃料として使われやすくなるので避けたほうがいいでしょう。
食事でとったエネルギーを筋トレに活かすために、食後2~3時間くらいがちょうどよいタイミングです。

筋トレはキツイもの?

筋トレと聞くとボディビルダーが重いバーベルを持ち上げているところを想像するかもしれませんが、簡単にできます。
また、辛い、道具がないとできないという声も聞かれますが、特別な道具も必要ありません。
激しい筋トレではなく、自宅で無理なくできるトレーニングでも効果があるといわれています。

シニア世代におすすめの筋トレエクササイズ

おすすめの筋トレについて紹介します。

スクワット

人間の筋肉の約7割は下半身にあります。そのため、下半身を鍛えることが健康寿命を延ばすことにつながります。
そして、下半身を効率よく鍛えるのに適しているのがスクワットです。
スクワットのやり方は脚を肩幅に開き、ゆっくり腰を上げ下げします。
お尻を後ろに突き出すようにして、膝がつま先より前に出ないことを意識するのがポイントです。

すき間時間を使ったカカトの上げ下げ

テレビを見ながら、電車やバスを待ちながら、カカトの上げ下げを行いましょう。
椅子などにつかまって、カカトをゆっくり上げて、ゆっくり下げます。簡単な運動で下半身の筋肉や骨盤底筋群を鍛えられます。
つまずきやすくなった、尿漏れが気になる方におすすめです。できれば1日1回を目安に行ってみてください。

ドローイン

吐く息でお腹を凹ませて腹圧を高め、腹直筋を修復させて鍛えます。
仰向けに寝て膝を立て、鼻から吸って、ゆっくり口から吐きながらお腹を凹ませていき、息を吐ききってお腹を凹ませたら状態をキープし浅い呼吸を繰り返します。
お腹の左右に手を当てながら行うと、お腹の動きがわかりやすいでしょう。

壁たて伏せ

腕立て伏せより負担が少ないため、筋力がない人でも始められます。
壁に手をつけて、ゆっくり肘を曲げていき、あごが壁に付いたらゆっくり戻していきます。姿勢が背中から腰が一直線になるようにするのがポイントです。
立った状態でできるので、場所も取らず、すき間時間を使って簡単にできます。

筋トレを長続きさせるには

目標を設定する

短期的な目標や長期的な目標を設定し、達成した時の喜びを想像することで、モチベーションを高めることができます。

トレーニングの内容を変える

同じトレーニングを繰り返すと飽きてしまうことがあります。定期的にトレーニングの内容を変えることで、新鮮な気持ちでトレーニングに取り組むことができます。

周りの人と切磋琢磨する

仲間と一緒にトレーニングすることで、切磋琢磨することができ、モチベーションを高めることができます。トレーニング仲間と一緒に目標を設定することで、目標達成への意欲も高まります。

ポジティブな言葉を使う

自分自身に対してポジティブな言葉を使うことで、自信を持ってトレーニングに取り組むことができます。仲間からもらうエールや称賛の言葉も、モチベーションを高める効果があります。

トレーニングジムでの筋トレも

ITツール比較サイト・STRATE[ストラテ]が行ったアンケートによると60代70代を対象の約12%がトレーニングジムやパーソナルジムで筋トレをしていると回答しています。
出典:STRATE/『60代70代を対象とした筋トレに関するアンケート』
トレーニングジムは重いバーベルを持ち上げるだけではありません。ストレッチ中心や自重(自分の体重を負荷にする)トレーニングなど、各自の体力に合わせて指導をしてくれるジムもたくさんあります。
また、マンツーマンで指導してくれるパーソナルジムもあり、料金は高めですが、きめ細かいサポートが得られます。

まとめ

筋トレを行うにあたり考えておきたいのが、自身の「もしも」のことです。誰もが加齢による体力の衰えに不安を感じるものですが、筋トレによって衰えを遅らせることができます。
筋肉は急につけることはできません。継続し、じっくり筋肉をつけていくことで徐々に健康で丈夫な体にしていくことが大切です。
いざという時のために筋肉を貯めておきましょう。もしも、突然病気になってしまい入院しても、退院後に早く元の生活に戻せる可能性が高まります。
筋肉は年齢関係なく、鍛えることで増えて丈夫になります。自分の身体に投資するという意味ですき間時間を使って、今日から筋トレを始めてみませんか。